お辞儀ハンコは「ビジネスマナー」なのか「謎マナー」なのか

最近話題の「お辞儀ハンコ」

インターネット上でも、さまざまな意見がみられます。

大方、お辞儀ハンコは「ビジネスマナー」ではなく、「謎マナー」であると、否定的に受け止めている印象です。

知らなかったという声が多数であることから、一部にのみ、浸透していた慣習ではないかと推察しています。

実際、私も知りませんでした。

そのため、ビジネスマナーとして妥当か否かについては、ここで語ることを控えます。

代わりに、以下の2点について、個人的な考察を書いてみることにしました。

  • お辞儀ハンコがうまれた背景
  • お辞儀ハンコへの抵抗要因
POINT

・分身として機能する名前

・実施対象で変わる受け止め方

※この記事は約2分でお読みいただけます

名前はその人自身

「名刺は分身です」

名刺交換のマナーを学ぶとき、このような言葉を耳にしたことはありませんか?

名刺は、単に名前や所属が書かれたカードではなく、その人自身。

だから、丁重に扱いましょう。

だいたい、このような展開です。

私は、お辞儀ハンコがうまれた背景に、この「名前」が、大きく関係しているのではないかと思いました。

押印は、印影によって意思や立場を表明する行為です。

つまり、印に刻まれた名前と、自分という存在を同一視しています。

そこに、稟議書の「書式」が絡み、お辞儀ハンコの誕生へと至ったのではないでしょうか。

並ぶことにより生まれた弊害

稟議書は、立案の決済・承認をいただくための書類です。

立場の低い者が作成・押印し、上位者へ廻しながら、承認の証として、順に印を頂く流れです。

稟議書の印欄は、通常、このように「横並び」となっています。

そのため、同列の欄に印が並ぶ様子は、まるで、それぞれが「対等」であるかのようなイメージを与えやすいのです。

そこで、上位者との「差」を示すため、下位者はお辞儀をするように、斜めに押印する。

これが、お辞儀ハンコが誕生した背景ではないでしょうか。

押印欄が縦だったら、お辞儀ハンコは生まれなかったかもしれませんね

ここまでの内容をまとめましょう。

  • 名前には本人を表す「シンボル」としての機能がある
  • 並列した押印欄は、上位者と対等であるかのような印象を与える

お辞儀ハンコは、これらの理由によって生まれたと想像します。

上下関係を過度に重んじる環境では、これを「非礼」と解釈したのかもしれません。

そのように考えれば、お辞儀ハンコを、「相手に対する配慮」と見ることもできるのではないでしょうか。

お辞儀ハンコへの抵抗

次は、お辞儀ハンコに対する「抵抗」について考えたいと思います。

皆さんのコメントを拝見していたところ、興味深い投稿を見つけました。

営業職に就かれていた方のご意見です。

何でも、契約書への押印に、お辞儀ハンコを実施していたとか。

それは、お客様に対する「感謝」のしるしだったようです。

実際、その方の言葉から、お辞儀ハンコに対するネガティブな意味合いは、感じ取りませんでした。

このたび、お辞儀ハンコが話題になったきっかけは、ここにある気がします。

  • 社内で実施されていたこと
  • 従わないことに対して上司がネチネチ言ったこと

要するに、場面が「ソト」ではなく「ウチ」だったことが、反発を招いた原因の一つということです。

お客様に対してであれば、今よりは多少受け入れられたかもしれません。

なぜなら、それは、座布団代わりの名刺入れに、相手の名刺を乗せる行為と、同じようなものだからです。

冷静にみれば、名刺入れを座布団って・・・不思議ですよね

それを抵抗なくできるのは、相手がお客様だからではないでしょうか。

もし、同じ所作を身内に求めれば、「そこまでする必要があるのか?」と、違和感を覚えるでしょう。

また、上位者への敬意を「強制している」ようにも映ります。

そこが、多くの方に不快を与えてしまったのかもしれません。

形式としての印影

もう一つ、お辞儀ハンコへの抵抗が湧きやすいのは、押印を「形式」としてみたときです。

その場合は、真っすぐ押すのが正しい押印になります。

したがって、それに反するお辞儀ハンコは、「ふさわしくない」となります。

擬人化せず、あくまで「形」として印影をみる。

この意見も、一理あると思いました。

最後に・・・

マナーは、良好な人間関係の構築を目的にした知恵です。

中には、普遍的人間の心理をついているものもあれば、時代や文化を反映しているものもあります。

前者であれば、時代を超えて受け継がれ、後者であれば、時代とともに、変化、淘汰されていくでしょう。

お辞儀ハンコは、主観によって、ビジネスマナーにも、謎マナーにもなる類です。

よって、必要と判断されるなら残り、そうでないなら、いずれ風化してゆくものと思います。

まとめ
  • 名前にはその人自身を表す「シンボル」としての機能がある
  • 並列した押印欄が「対等」をイメージさせ、お辞儀ハンコを生んだと考えられる
  • お辞儀ハンコへの抵抗は「ウチからの強制」を感じさせるため
  • 「ソト」へのお辞儀ハンコはお客様への感謝が込められている
  • お辞儀ハンコは主観でビジネスマナーにも謎マナーにもなる
  • マナーは、時代とともに変化するのが自然